中国の人ってメガネをかけている人が多い気がするけど、気のせい?
気のせいではありません。データで裏づけられた事実です。
黒縁メガネをかけた日本人が「中国人みたい」と言われた、という逸話があります。それほど「中国人=メガネ」というイメージが定着しているわけですが、実はこの印象はデータによってしっかりと支持されています。
中国国立疾病管理予防センターのモニタリングデータによると、2022年時点で中国の高校生の近視率は81.2%にのぼります。つまりメガネをかけていない高校生のほうが少数派というのが現実です。こうした圧倒的な近視率の高さが、「中国人にメガネ姿が多い」という印象の背景にあります。
この記事では、なぜ中国でこれほど近視が広がったのか、その背景にある原因や屋外活動との関係、さらには急成長する中国のメガネ市場、日本ブランドの参入事情、ARグラス市場への波及まで、データと事実をもとに掘り下げていきます。
- 中国の高校生の8割以上が近視で、G20中で視力障害の有病率が最も急速に増加した
- 中国のメガネ小売市場は2025年に470億元超えが予想され、2035年には413億ドルに達する見通し
- 日本のメガネブランド(金子眼鏡など)が中国市場に参入し、初月から売上目標を超えるケースも
- 中国人のメガネ着用率の高さは、ARグラス・スマートグラス市場の成長とも関連している
中国人のメガネ着用率が高い理由と近視の現状
- 中国の子どもの近視率が世界トップクラスになった背景
- 近視が急増した原因と屋外活動時間の関係
- 急成長する中国のメガネ市場規模と今後の予測
中国の子どもの近視率が世界トップクラスになった背景


中国の子どもたちの近視率は、世界的に見ても突出した水準に達しています。
中国国立疾病管理予防センターのモニタリングデータによると、2022年の児童・青少年全体の近視率は51.9%、そして高校生に限ると81.2%にのぼります。もはやメガネをかけていない高校生のほうが珍しい、という状況です。また2018年の「全国児童青少年近視調査報告」では小中学校の児童の近視率は53.6%、2021年の北京大学中国健康発展研究センターによる報告では60%超と、数年間で着実に悪化していることがわかります。
特に注目されるのは小学校の期間です。小学1年生の時点では近視率は15.7%ですが、小学6年生になると59.0%まで急上昇します。近視になる年齢が低いほど強度近視へのリスクが高まるとされており、この傾向は深刻な問題として受け止められています。
医学誌ランセット・パブリック・ヘルスの研究によると、1990年から2019年にかけて中国の中度・重度の視力障害の有病率はG20の中で最も急速に高まったとされています。また、青少年の近視率は世界1位との指摘もあります。中国の近視患者は6億人にのぼるとの指摘もあり、10年以内に9.6億人、最悪の場合11億人に達するとの予測もあります(いずれも1ソースによる報告)。
近視が急増した原因と屋外活動時間の関係


中国で近視が急増した原因として、学習優先で屋外活動時間が短くなっていることが主な要因とされています(報告ベース)。また、「近視は成長で治る」という俗説や、「メガネをかけると近視が進む」という俗説が根付いており、適切な対処が遅れてしまうケースがあることも指摘されています。なお後者については、実際にはメガネ着用が近視を進行させるわけではなく、むしろ逆の効果があるとされています。
細かい漢字を使う国(中国・台湾・日本など)では近視の人が多い傾向があります。文字の複雑さと近視の関係は、以前から研究者の間で注目されてきたテーマです。
屋外活動と近視の関係を示すデータとして、シドニーで暮らす中国人小学生(6〜7歳)の近視率は約3%であるのに対し、シンガポールで暮らす中国人小学生の近視率は約29%です。この差の背景には屋外活動時間の違いがあり、シドニーでは平均3時間、シンガポールでは平均30分という大きな差があります。屋外でスポーツをする子どもほど近視になりにくいとの報告もあり、体に日光を浴びた際に分泌されるドーパミンが近視を抑制する可能性があるとも指摘されています(いずれも報告ベース)。
小学校の6年間で近視率が15.7%から59.0%へと急上昇する事実は、この時期の生活習慣がいかに視力に影響を与えるかを示しています。近視になる年齢が低下するほど強度近視リスクが高まることからも、早期の対策が求められています。
「眼鏡をかけると近視が進む」という俗説は誤りとされています。適切な度数のメガネを使用することが、視力管理の基本です。
急成長する中国のメガネ市場規模と今後の予測


これほど多くの人が近視であれば、メガネ市場が巨大になるのも当然です。
中国のメガネ小売市場は2025年に470億元(約9,233億円)を超えると予想されています。また別の調査によると、2026年には230億米ドル、さらに2035年までには413億米ドルに達するとの予測もあり、年平均成長率(CAGR)は6.72%とされています。2023年時点のメガネ市場規模はすでに1,143億元に達しており、同年の眼鏡産量は約9.75億副(副=本)という規模です。
地域シェアという観点でも、中国はアジア太平洋地域のメガネ市場で55〜60%以上のシェアを占めているとの報告があります。
販売チャンネルも変化しています。メガネのオンライン販売の割合は2007年の1.3%から2021年には17.0%まで拡大しました。また、都市部の消費者はメガネをファッションアクセサリーとして扱うようになっており、一人で複数のメガネを持つことが当たり前になっています。卸売市場で直接買い付けをする消費者も増えており、眼科病院に劣らない検眼・調整サービスを提供する卸売市場の店舗も登場しています。
中国人とメガネをめぐる最新動向と日本との接点
- 中国でメガネを購入すると日本とどう違うのか
- 日本のメガネブランドが中国市場に参入するわけ
- メガネ着用率の高さがARグラス市場の成長を後押しする
中国でメガネを購入すると日本とどう違うのか


実際に中国でメガネを購入した体験談を見ると、日本と異なる点がいくつか見えてきます。
まず視力検査の方式が異なるケースがあります。日本では「C(ランドルト環)」の切れ目の方向を答えるのが一般的ですが、中国では「E」の向きで答える方式が使われることがあるとのことです(体験報告)。また、外国語が通じない場合でも翻訳機やジェスチャーで対応してくれるケースがあり、メガネが完成するまでの時間は約15〜30分との体験談もあります(いずれも体験報告)。
中国でメガネを購入する際は、視力検査の方式が日本と異なる場合があるため、戸惑わないよう事前に知っておくと安心です。
価格面では、中国のメガネ店「LOHO」でのフレーム価格は399元〜699元程度との体験談があります(体験報告)。一方で、HOYAのレンズは中国では日本よりはるかに高いとの報告もあります(体験報告)。日本ブランドのJINSは中国にも店舗を展開しており、視力測定が無料で提供されているとの体験報告があります。中国のJINSスタッフが顧客に対して「日本で購入するほうがお得」とアドバイスするケースもあるようです(体験報告)。
卸売市場では、流通コストをカットした価格で購入できるとして消費者の利用が増えており、眼科病院と同水準の検眼・調整サービスを行う店舗も現れています。
日本のメガネブランドが中国市場に参入するわけ


日本のメガネブランドが中国に進出するって、リスクも高そうだけど実際のところどうなの?
JETROの公式インタビューによると、金子眼鏡の中国1号店は初月から売上目標を超えたそうです。
福井県鯖江市に拠点を置く金子眼鏡は、2023年4月28日に上海市武康路に中国1号店を開設しました。これはJETROの公式インタビュー記事で詳しく紹介されており、信頼性の高い情報源です。
同社が中国進出を決めた背景のひとつとして、日本の店舗に訪れるインバウンド客の約半数が中国大陸からであり、さらにその半数が上海出身という実績がありました。来店客は女性が多く、日本国内の日本人客より10歳ほど若い客層であることもわかっていました。また、日本の2倍を超える単価の商品を購入するケースもあり、購買力の高さも確認できていました。
実際に中国1号店を開設してみると、初月から売上目標を超え、月を追うごとに来店客数と売上の最高値が更新されているとのことです。半数が上海市以外からわざわざ訪れる客で、一度に複数本のメガネを購入するケースも少なくありません。
金子眼鏡はEC展開をせず、SNSは微信公衆号(WeChat公式アカウント)のみ、KOL(インフルエンサー)の起用もなしという方針で運営されています。過剰なプロモーションに頼らなくても集客できている点が注目されます。
進出にあたっては商標の冒認登録という課題に直面しましたが、約1年という短期間で解決に至っています。今の中国消費者は、目立つロゴや派手なデザインよりも洗練されたものを好む傾向があるとされており、同社はその需要にマッチしたと考えられます。今後は中国一線都市への出店拡大も検討しているとのことです。
メガネ着用率の高さがARグラス市場の成長を後押しする


高い近視率とメガネ着用率の高さは、次世代デバイスの市場形成にも影響を与えています。
中国人のメガネ着用率の高さが、ARグラス開発が活発化した背景のひとつとされています。メガネという形状に慣れた消費者が多い中国では、ARグラスという製品形態が受け入れられやすい土壌があるとも言えます。Ray-Ban Metaは中国では未発売ですが、メガネ着用率が高い中国と特に相性が良いとの指摘もあります。
その中でも特に注目される企業のひとつがRokidです。浙江省杭州に拠点を置くこの企業は、CEOがアリババ出身で、2014年にGoogle Glassに刺激を受けて設立されました。2018年には国家ハイテク企業に認定され、2023年の「胡潤 世界ユニコーンリスト」にも入っています。2024年1月のC+ラウンドでは5億元弱(約100億円)を調達するなど、資金面でも成長を続けています。
一方でARグラスは、コンテンツやサービスの充実という点では米国や日本と同様、まだ十分とはいえない現状もあります。ただし、中国はARグラス分野において国内市場と世界市場の両方を視野に入れながら、自国企業での技術追求を進めています。中国の高い近視率とメガネ着用率が、こうした次世代デバイス市場の成長を下支えする構造になっていると言えるでしょう。
中国人とメガネに関する豆知識まとめ
この記事のまとめです。
- 2022年の中国の高校生の近視率は81.2%で、メガネをかけていない方が少数派
- 中国の児童・青少年全体の近視率は51.9%(2022年、中国国立疾病管理予防センター)
- 小学1年生の近視率は15.7%だが、小学6年生では59.0%まで急上昇する
- G20の中で、中国は1990〜2019年にかけて中度・重度の視力障害の有病率が最も急速に高まった
- 近視急増の主な要因として、学習優先による屋外活動時間の不足が挙げられている
- シドニーとシンガポールの中国人小学生を比較すると、屋外活動時間(3時間vs30分)の差が近視率(3%vs29%)の差に表れている
- 「眼鏡をかけると近視が進む」という俗説は誤りとされており、適切なメガネ使用が推奨される
- 中国のメガネ小売市場は2025年に470億元超えが予想され、2035年には413億米ドルに達するとの予測もある
- 中国はアジア太平洋地域のメガネ市場で55〜60%以上のシェアを占める
- 北京には500を超えるメガネ店が集まる「メガネ城」が存在する
- 金子眼鏡(福井県鯖江市)は2023年4月28日に上海市武康路に中国1号店を開設し、初月から売上目標を超えた
- 金子眼鏡の中国店の来店客は日本人客より10歳若く、2倍超の単価の商品を購入するケースもある
- 中国の高いメガネ着用率はARグラス市場の成長とも関係があるとされており、Rokidなど有力企業が育っている
- メガネのオンライン販売割合は2007年の1.3%から2021年には17.0%まで拡大した
- 今の中国消費者は目立つロゴや派手なデザインよりも洗練されたデザインを好む傾向がある









